Posted: April 11, 2017
メノナイト世界会議(MWC)に所属する24の教会団体を3年かけて調査した、グローバル・アナバプテスト・プロファイル(GAP)の結果は喜ばしいものだ。教会は成長し、福音は広められており、その主な担い手は南の途上地域である。この調査が明らかにしたものには、MWCが主にラテンアメリカ、アフリカ、アジアで成長している、といった既知の事柄もあるが、前例のない規模で行われたGAPではメノナイトのアイデンティティと実践について新たな統計データや情報が明らかとなり、今後も北の先進地域と南の途上地域の教会双方に役立つ分析を提供した。
GAPに参加した教会団体はすでに、調査結果から新しい手法や洞察を得て、その働きを豊かにしている。調査員のレイナルド・ヴァイエシヨ氏(ホンジュラスのアモール・ヴィヴィエンテ教会)は、「非常に価値のある情報が多いです。とりわけ教育の面でのわれわれのニーズを知るのに役立ちます」と話す。
エチオピアの調査員ティギスト・ゲラグレ氏(メセレテ・クリストス教会)も同感だ。「文化的背景は大事ですが、アナバプテストのルーツもまたわれわれの文化に含まれます。それを教会に取り戻したいです。」
GAPはグローバル・アナバプティズム研究所の支援により行われ、現在MWCに加盟する教会のもっとも包括的な姿を教会指導者に提供する。5つの地域から24の教会団体が選ばれ、プロファイルに参加した。団体の指導者が調査員を任命し、各々の教会で調査を行った。
2013年、調査員らはGAPの責任者であるジョン・D・ロス氏(米国インディアナ州ゴーシェン大学)とコンラッド・カーネギー氏(米国ペンシルヴェニア州エリザベスタウン大学)とともに、調査方法を決定した。このグループによりアンケートの主要な部分が、MWCの「共有の確信」7カ条にそって作成され、統計や具体的な信仰および実践についての質問が付け加えられた。こうして作られたアンケートは英語から26の言語に翻訳され、比較と正確を期すため再度英訳してチェックされた。
調査員の活動は2013年に始まり、彼らは選ばれた各個教会に直接出向いてGAPを説明し、調査と面接を行った。教会が比較的近接していたり、教会と電子メールでやりとりできる団体もあったが、コンゴメノナイト共同体やコンゴメノナイト兄弟教会共同体のように、いくつも川を渡り、家を何日も空けなければならないところもあった。
調査員は2015年に再集合し、調査結果や経験を分かち合った。その間、カーネギー氏(他の教会員プロファイルを数多く手がけてきた)は調査に参加したすべての教会団体のデータをまとめて分析していた。その結果まとめられたプロファイルは、403教会の18,299人への調査に基づくものである。
カーネギー氏はいう。「GAPはたいへんな努力です。これを3年でやり遂げたことは、神の恵みと多くの人々の驚くべき努力のおかげです。」
MWCの加盟教会にはどんな人たちがいるか
GAPの結果は今年中にも公表される予定だが、世界中にある教会の重要な共通性と大きな違いを見てとることができる。全体としては、「先進地域(北米とヨーロッパ)」の教会と「途上地域(ラテンアメリカ、アフリカ、アジア)」の教会の違いの方が、教派に関わる違いよりも、より重要である。
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調査に回答した人の平均年齢は46歳だが、地域によって相当の違いがある。欧米の教会員はアジア、アフリカ、ラテンアメリカの教会員に比べて平均して10歳ちかく高齢である。さらに、途上地域の教会員の54パーセントは18〜45歳である。子育て世代に教会員が集中していることから、教会が将来さらに成長することが予想される。先進地域の子育て世代は34パーセントにとどまる。
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世界全体で見て、GAP回答者は男性と女性が半々だった。ラテンアメリカとヨーロッパでは女性がより多く、アフリカとアジアでは男性が多かった。ただしアフリカでは、女性の識字率が低いことが結果にかなり影響していると思われる。字が読めない教会員には調査員が便宜を図ったものの、女性がアンケートを完成させられないケースがしばしばだった。
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GAP回答者の62パーセントが農村部に住んでいる。しかし、地域による違いがここでも重要である。アジアでは90パーセント近く、アフリカでは回答者の3分の2近くが農村部に住む一方、ヨーロッパとラテンアメリカの回答者では都会に住む割合が大きい。
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調査からはMWC加盟教会の間に教育の不均衡が顕著であること、それが世界の教会の間にある社会的・経済的不均衡を拡大する要因であることがわかる。途上地域の教育レベルは、高校を卒業した教会員が46〜58パーセントにとどまったままである。先進地域では、これが78〜93パーセントに跳ね上がる。
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GAPに回答した人の平均的な回心の年齢は19歳である。平均年齢の最低は北米の14歳、最高はラテンアメリカの23歳である。回心年齢の違いは伝道活動によるものと考えられる。若い教会は教会の外から大人の会員を得るのに熱心な傾向があり、平均年齢が高くなる。古い教会は教会の中の子どもや青年の回心に頼る傾向が強くなり、平均年齢を押し下げるのである。(「回心の平均年齢」を参照)
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回答者の多くは、とくにラテンアメリカに顕著であるが、比較的最近キリスト教徒になった人たちである。ラテンアメリカの回答者の65パーセントは1991年以降に回心している。アフリカでは、54パーセントが過去25年以内にキリスト教徒になった。一方北米では、1991年以降に回心した人はたった22パーセントである。過去25年間で途上地域(とくにラテンアメリカとアフリカ)の教会団体が驚くほど成長したことが、これで説明できる。
彼らの信仰と実践はどのようなものか
信仰と実践(その多くはアナバプテストのキリスト教の核となる信条)はGAP回答者にとってほぼ普遍的といえる。たとえば、回答者の94パーセントが信仰に目覚めて生まれ変わることはとても重要だと答え、91パーセントがイエスこそ神に至る唯一の道であると答えている。同様に、回答者の多くが聖書を神の言葉であるとしている。
兵役に対する警戒も顕著である。回答者の76パーセントが、もし兵役を命じられれば、拒否するか非戦闘分野の任務を選ぶとしている。良心的兵役拒否を選ぶという回答は、先進地域(61.9パーセント)でも途上地域(62パーセント)でも、ほぼ同じ割合であった。
しかし、調査では大きな違いも明らかになった。全体としては先進地域と途上地域の違いが大きいが、教派による違いや地域による違いもある。たとえば、これらの教会団体同士を束ねて活発な関係づくりを手がけているメノナイト世界会議を知っているかという問いに対しては、地域により教派により違いがあった。途上地域では55パーセントが知っていると答えたのに対し、先進地域では75パーセントが知っていると回答した。教派では、キリスト兄弟団(BIC)の66パーセント、メノナイトブレザレンの76パーセント、メノナイトの46パーセントが知っていると答えた。
さらに深く掘り下げると、共有されているはずの信仰と実践にも違いが影を落としている。たとえば、回答者の多くが聖書を神の言葉であると答えているが、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの回答者の55パーセントが、加えて聖書は字義どおりに解釈されるべきだとしている。これと同じ見解の欧米の回答者は20パーセントにすぎない(先進地域の回答者の74パーセントは「聖書は文脈により解釈されるべき」を支持した)。さらに、地域によって聖書の特定の箇所をより強く強調することもわかった。欧米では新約聖書がもっとも意味があると考えられているのに対し、アジア、アフリカ、ラテンアメリカでは28パーセントにとどまる。途上地域の回答者はむしろ旧新約両方の聖書に意味があるとする傾向が強い。
途上地域の回答者には、カリスマ的な賜物への傾倒も強い。アフリカ、アジア、ラテンアメリカの84パーセントに預言や異言、奇跡的な癒し、悪霊払いの経験があり、欧米では31パーセントである。
先進地域と途上地域は、しかし、均質な分類というわけではなく、地域による違いもまた重要である。たとえば、アフリカとアジアでは悪霊からの解放を経験したという割合がもっとも高いが、ラテンアメリカでは56パーセントが怪我や病気が奇跡的に癒されたと答えている。
個人伝道は初期再洗礼派に非常に特徴的だが、これも違いがある。アフリカの回答者の51パーセントは、自分の家族や教会以外の人に少なくとも週に一回は自分の信仰について話しているが、ヨーロッパでは13パーセントである。アジアの33パーセント、ラテンアメリカの26パーセントが信者ではない友人を毎週教会に誘うが、北米ではわずか9パーセントである。
GAPが示唆するのは、個人伝道は途上地域では多くの人の日常的な実践になっているが、先進地域の人には比較的珍しい行いになっているということである。
データが私たちに告げるもの
こうした違いはどう説明できるだろう。私たちはみな同じ聖書を読んでいるのに、それを違って解釈し、ある箇所の意義にも違った重みを与える。私たちの間に聖霊がおられると誰もが言うが、その同じ霊の現れ方をまるで違って経験する。私たちはみな同じ平和教会の伝統に連なるが、兵役や警察活動は教会団体によって認められたり退けられたりする。私たちはみな福音を受けているが、みなが同じように伝道するわけではない。
GAPの結果に見られる違いについてこんな説明もかえってきた。たとえば、激しい内戦下にあって、ニカラグア福音メノナイト教会連合は兵役に強く反対する立場をとり、今も堅持している。マルコス・オロスコ氏は「このままでは教会の仲間同士で殺しあうことになる。それができないことは明らかだった」という。アフリカとアジアの調査員は、地域にある先祖崇拝の影響が、同様の実践を記した旧約聖書を彼らが重んじる背景だと答えた。
ただ、教会団体それぞれがおかれた特定の文脈だけでは、GAPのデータに見られる多くの重要な相違点が、なぜ先進地域と途上地域の違いに重なりあうのかを説明することはできない。
この違いが意味する社会経済的・政治的格差は、この世で破壊的なまでに大きいもので、それはときに教会の中に影を落とす。その意味で、GAPで得られたデータは悔い改めへの呼びかけである。それは同時に、福音がそれぞれの文脈に異なった仕方で土着化することに目をみはり称えるよう招くものでもある。そしてなにより、これはメノナイト世界会議においてより一層の一致のためのユニークな機会である。
GAPに参加して一致の感覚を得られたことへの感謝を、調査員らはくり返した。フィリピン統一メノナイト教会のレジーナ・モンデス氏はいう。「言語や文化が異なっても、言葉にはできない仕方で、文化をこえた一致を数字が伝えてくれるのです。」
マルコス・オロスコ氏も、GAPの目的6項目を一つにまとめてこういう。「私たちに必要なのは、世界の教会の兄弟姉妹の経験に学び、めいめいが強さと弱さをもっていることを知り、それを強めたり改善したりすることです。」
エリザベス・ミラー氏はグローバル・アナバプティズム研究所のプロジェクトおよび渉外マネジャー。米国インディアナ州ゴーシェン在住。米国メノナイト教会所属。
GAPに参加した教会団体
- グローバルなアナバプティズムの理解をさらに深めること
- 宣教や優先課題を導くための情報を提供すること
- メノナイト世界会議(MWC)で教会間の関係を強めること
- MWCの優先課題を明らかにすること
- 将来的な変化を計る上での基準値を定めること
- 将来、教会の実態調査ができるよう指導者を訓練すること
- 北米 1975年
- ヨーロッパ 1982年
- アジア 1984年
- アフリカ 1991年
- ラテンアメリカ 1995年
- 北米 13.6歳
- ヨーロッパ 17.3歳
- アジア 16.3歳
- アフリカ 20.7歳
- ラテンアメリカ 23.2歳
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